大阪の社会保険労務士、村田社会保険労務士事務所による労務管理情報

外国人研修制度・技能実習制度の問題点

問われる制度のあり方

開発途上国への国際協力のあり方について、今、自衛隊の海外派遣の是非を含め、活発な意見交換がなされています。そんな中にあって、「外国人研修制度・技能実習制度」のあり方も問われています。

 

外国人研修制度・技能実習制度とは

外国人研修制度・技能実習制度は、開発途上国への国際貢献と国際協力を目的として、諸外国の青壮年労働者を受け入れて、日本の技術・技能・知識の習得を支援することを目的とする制度で、財団法人国際研修協力機構が推進団体となり、民間団体や企業に対して総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行っています。
基本的には、民営または国公営の送出し機関から送り出された研修生(技能実習生)に来日してもらい、日本側の受入れ機関において研修を行って、日本の高い技術の習得を支援します。
研修生は、「研修」の在留資格で入国します。日本国内の受入れ先が決まっていないと入国できません。研修生の滞在期間は原則1年以内。研修の結果、一定以上の技能水準に達したことが認められた場合、在留資格が「研修」から「特定活動」に変わり、新たに受入れ企業と雇用契約を結んで、継続してさらに2年を限度に就労することができます。これが「技能実習」です。技能実習の対象職種には、63職種116作業が認定されています。

 

急増する問題点

外国人研修制度・技能実習制度は、単なる経済援助とは性格の異なる「人材育成協力」に主眼を置いた制度である反面、問題点も含んでいます。受入れ企業・団体による「不正行為」です。
外国人研修・技能実習制度に基づいて外国人を受け入れた企業・団体のうち、不当な低賃金で働かせるなどの「不正行為があった」と認定された件数は、2007年度は449件にのぼりました。これは前年の229件の約2倍で、2003年の調査開始以来、過去最悪の結果です。
不正行為のうち最も多かったのは、賃金不払いなどの「労働関係法規違反」で178件、また、受入れを申請した企業と実際に就労した企業が異なる「名義貸し」も115件にのぼっています。旅券や通帳を取り上げるなど、「悪質な人権侵害行為」も70件ありました。日本人労働者を確保できない企業、外国製品との価格競争にさらされている企業が、本来の目的である国際貢献ではなく、低賃金労働力の確保のために制度を利用しているのです。また、研修生の側でも、出稼ぎのつもりで来日する者がいて、失踪者や不法残留者が増加しています。
こうした問題点に対して、制度の見直しや改善が迫られているのです。